novel99’s blog

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永遠の仔 その1「再会」

●久坂優希(中谷美紀) ●長瀬笙一郎(渡部篤郎) ●有沢梁平(椎名桔平) ●早川奈緒子(石田ゆり子) ●久坂聡志[優希の弟] ●久坂志穂[優希の母親] ●久坂雄作[優希の父親] ●長瀬まり子[長瀬の母親]
「お久しぶりです。 私は今、町病院の看護婦をしています。 海が近くて、いい場所です。」 優希から手紙が来た。あれから三年も経っているというのに、懐かしさとか久しぶりだなといった感情は起きなかった。 あぁ、三年か・・という事実確認のみ。 手紙には、何気ない彼女の身の回りの事が書かれていた。世話になっている病院の話、海が近いからそこでの暮らしの話、そして、笙一郎の事。 「・・・あれから、いろいろと考える機会がありました。 こんな事を書くと、何かそれに執着ばかりしているように心配するかもしれませんが、私は大丈夫です。 彼の死や、様々の事を受け入れるまでに時間はかかりました。今も完全に、というわけではないでしょう。波のように引いては返す、そんな感じです。 ただ、最初から今まで、それが苦痛になるような事はありません。 忘れる事もなく、ごまかしもなく、ただすっと身を委ねて生きています。」 最後に、彼女の住所と、病院の住所が明記されていたが、駆けつけようという衝動は起きなかった。 俺は彼女にもう執着しなくなっていた。 夏にでも、遊びがてらに行ってみようと思う。 手紙を読み終え、封筒に戻すと、目的の場所の近くだった。 夏前の成長の盛りで、ここまで来るまでは草や木々などがギラギラと日の光を浴び生きていたが、森に入れば入るほど、太陽の光は地に直接届かなくなっていた。 こけの間に短めの草が生えていて、葉の上に朝露がまだ残っていた。 少し湿った空気、たまにカラっとした風も吹く、虫の音はするというのに耳にまとわりつかず、ここが笙一郎が眠る最適の場であるような気がする。 ゆっくりと静かに戻れる場所。 「やっぱり、今年も来たんだ。」 後ろから少年の声が聞こえる。 振り向くと、少し嬉しそうな顔をして、立っている。 「ああ、友達の墓参りさ」 俺は、答える。 「じゃあ、俺も」 と俺の横についてくる。彼とは、この俺に必死についてこようとするこの少年とは、三年前に知り合った。 昔俺達が秘密の場所として使っていた大木の前で・・。 俺が「今日も、ひとりなのか?。」と聞くと、こちらを見ずに「あぁ、今日はねっ」と答えた。 額に汗して、何かを見つけにでも行くようなワクワクした表情をして。 最初、こいつが俺に発した言葉は「おまえ何してるっ」だった。 俺が、笙一郎の骨灰をあの大木の前に蒔き終え、しばらく地上に突き出ていた樹の根の上に腰をおろしていた時に、こいつと、こいつの仲間が、そう言った。 「そこで、何してるっ、そこは俺達のもんや。」 俺達が秘密の場所としていたこの大木は、俺達が彷徨っている間に、こいつらに共有されていた。 「おまえらこそ、何だっ」後ろにいた幾人かの奴は、俺の声にびびっていた。 大人げもなく、大声で返したからだ。その事に気付いて、続けて 「すまん、すまん。おまえ達のとは気付かなかった。すぐ退くから許してくれ。」 と優しく言って、骨壺の木箱の上を結び直し、持ち上げて、ここを去ろうとした。 このまま彼らが来なければ、夜まで腰を据える勢いだったのが、彼らが来たので、といっても決して彼らが邪魔になったわけでもないのに、去ろうとしていた。 俺がその樹から離れると、自分たちの領域の安全を確かめるために、急いで、子供達は樹の周り、樹の幹の間にぽっかり空いた穴の中を探った。 しばらくして、ひとりの少年が、俺の後を追いかけてきた。それが彼だ。 「何か用か?」 と歩む足を止め、振り返って質問すると、今日のように額に汗して俺の後をついてきたそいつは 「あそこ、いつでも使っていいぞ」 と真剣な表情で返してきた。 その彼の申し出を俺は邪険には扱わなかった。「じゃあ、そうさせてもらうよ」と少しばかり微笑んで言ってやった。 それでも、こいつは俺の後ろについてきた。後ろからどこにいくの?という友達の声を全く無視して、森を抜けて、町を通り、駅までついてきた。 俺はその間特に会話を交わすことはなく、駅の改札を抜けて、ベンチに座った。 そいつもベンチに座った。駅員は無関心に、ホームの掃除をしていた。 「なぁ、そんなか、骨はいってるんか?」 膝に置かれた白布で包まれた骨壺の入った木箱をじっと見て聞いてきた。 続けて、「はいってんやろ。この前、葬式で見たけん。そん中、骨の燃えたやつ、はいってんやろ?」 彼が追いかけて来た理由は、俺ではなく、これだったようだ。 誰の葬式で、これを見たのかは分からないが、彼の目に、この大きいとも小さいとも言えない白い真白いこれが、強烈に焼き付いたのだろう。 俺も俺で、その質問に対して、何の干渉される気持ちもなく、すんなりと答える気持ちでいた。 聞いてきたやつが子供だから限った事でないような気がした。今思うと、その時から俺は何かから解放されていたんだと思う。 「この中には、何も入ってないんだ。」 えっ、と言って やっと俺の方を見て驚きの顔をしていた。 「この中には、俺の親友の骨が入っていた。それは、さっきあの樹の前に蒔いてきたんだ。 あそこは、俺達にとって大切な場所だったからだ。」 彼はふーんと遠くを見て、電車を見ていた。線路が大きく円を描いているから首を曲げなくてもその車体が見えた。 ベンチから腰を上げると、彼も振っていた足を止め、軽めに前にジャンプして、ベンチから立ち上がった。 さっきまで近かった目線が立ち上がった事で、遠くなる。 「じゃあ、俺も、そこに骨を蒔くよ。あそこは俺にとっても大切な場所やけん。」 別におかしな事でないが、普通の大人は止めただろう。でも俺は「そうだな。」と言っていた。 それから、俺は列車に乗って、彼とは別れた。 一年目、二年目と今日で4回目になる。 クチョクチョと湿った土を踏む音が聞こえる。 「なぁ、あの女の人は、友達?」 秘密基地の前にいたのは、優希。彼女だった。 「あの子はだれ?」 優希は笑いながら半歩前にで俺に聞く。 「友達さ。ただの」 彼とは、あの樹の前で別れた。用事があるらしい。 優希ともに、笙一郎に花を添えて、二人で森を出ることにした。 自然と話は弾んだ。 「ただのって、随分小さな友達なのね」 「あぁ」と答えると彼女は話しを続ける。「最初は、親子だと思った。」 三年の間に、どう成長するのか可笑しい話だが、そこに彼女の望み みたいなものが見えた。 「有沢君は、まだ一人なんで、安心した。はは」 最後の笑いが全く冗談のようで、同じような質問を返した。 「優希は?」 軽い気持ちで聞いたのに、後で少し後悔した。でも結局聞くべき事だったとも思った。 「まだ、それには抵抗あるんだ。どうだからって事はないのに、親になる事には、少しね。 でも、この不安みたいのは、きっと私だけではないと思う。余り深く考えるべきではないわね。」 ゆっくりと、丁寧に深刻な顔を解くように話している。 彼女は、賢いから知っているのだろう。 親から虐待を受けて育った親は、また自らの子にも同じ事を繰り返すという事を。 だから慎重に、でも過敏に深刻にならぬようにしている姿が見えた。 ゆったりと安らかな笑顔に安心した。彼女は嘘をついていない。 「相手がいないから、言い訳しても無駄だぞ。 あの町じゃ、行き遅れの漁師とかしかいないんじゃないのか?。」 彼女はずはりその通りという余裕の表情を見せる。 「有沢君は、何しているの?」 そう優希が聞いた時、 サババババと音をたてて、木の葉やら、枝が揺れ、斜め後ろの森の奥からやってきて、風が抜けていった。 若葉から少し成長した葉が、その風に乗ってほぼ水平に流れていった。    「あのふたりが、友達なのか?」          「ああ、ジラフとルフィンって言うんだよ。僕の親友さ。」 その夜は止めどない話しを続けた。 俺らは、再会した。また事件が起きるのかい?。 ははは、それはゴメンだ。
▲また再会した三人。 幸せな再会でありますように。^^ 最終回、最後のシーンの切実でゆったりとした空気みたいのを意識して書きました。 映像では、そんなに森の中が鬱蒼とした感じでは無かったんですが、 感じ取った雰囲気がそうだったので・・・・細かい所気にしないでください。^^;